コラム

ヤングケアラー環境は子どもの学びに影響があるのか

2026年2月20日

「ヤングケアラー」という言葉をご存知でしょうか。

ひと言で言えば「介護やお世話を日常的におこなっている子ども」のことで、具体的には「慢性的な病気や障害、精神的な問題などを抱える家族を日常的に介護・世話することで、本来大人が担うべき家事や家族の世話を過度に行っている18歳未満の子どもや若者のこと」とされています。

昨今SNSなどでも使われるワードで、国としても支援の予算がつくような状況となっています。
日常的な介護・世話ということでパッと見は単なる「お手伝い」との線引きも含めて少しイメージつきにくいかと思います。

ご参考までに次のような状況下にある子どものケースをイメージしていただければと思います。

【幼い兄弟のお世話をする小学生・中学生・高校生】

親が夜遅くまで働いていたり、不在がちであるために、実質的な「親代わり」をしているケースです。お世話していることを挙げてみますと

 ・保育園の送迎
 ・買い物、料理、掃除、洗濯などの家事全般
 ・入浴や着替え、寝かしつけなど

といったことになり、夕方~夜にかけて一般的には親がしているお世話を幼い兄弟にしている状況下があたります。

【障害・病気のある兄弟の世話】

ご兄弟に重い障害や慢性疾患がある場合、親だけでは手が足りず、子供がケアの担い手になるケースです。

 ・常時の見守り
 ・外出時の介助

目を離すと危険な行動をとる可能性があるため、親が家事をしている間、そばで見守っていく必要があったり、車椅子の補助、パニック時の手伝いなどによって学校以外の場所が常時兄弟と一緒に過ごす必要があるような環境があたります。

【親・または祖父母の介護】

ご家族の障がいや要介護状態の祖父母がいるケースです。

 ・トイレの介助、入浴の介助、着替えの手伝い、食事の補助など身の周りの介助
 ・服薬管理やたんの吸引など医療的ケアの一部
 ・認知症の祖父母の見守りやトイレの付き添いなど

【親の疾患のサポート】

アルコール依存や精神的な疾患を持つ親の支えとして親のサポートをしているケースがあたります。

 ・愚痴の聞き役
 ・親の感情に注意を払って生活

周囲から見えにくいケースであり、子供が親の精神的な支えになっている場合があります。

【通訳や手続き関連】

親が言語的に十分に周囲の日本人と会話できない場合、子どもが通訳の役割を担うケースがあたります。

 ・役所の手続き、通院などに子どもの同席が必要になる。
 ・郵便物や書類をすべて子どもが親に通訳する必要がある

多様なケースを挙げてきましたがこれらに当てはまるわけではないヤングケアラーも存在するかと思います。
実態としてはこれらに該当するような子どもが厚生労働省による令和2年度・3年度の調査によると

・小学6年生:6.5%(15人に1人)
・中学2年生:5.7%(17人に1人)
・高校2年生(全日制):4.1%(24人に1人)
・高校2年生(定時制):8.5%(24人に1人)
・大学3年生:6.2%(16人に1人)

いるということです。
「5~6%」という数字だけ見ると少なく感じるかもしれません。しかし、これは「35人のクラスなら、必ず1~2人はいる」という確率です。教室を見渡したとき、その中の誰か一人は、放課後に遊ぶことなく、家族のために家事や介護を背負っているのです。

全日制高校(4.1%)に対し、定時制高校(8.5%)や通信制高校(11.0%)の割合が高いことからも、「ケアと両立するために、全日制への進学を諦めざるを得なかった」子どもたちが一定数いることが推測されます。 つまり、数字が減ったのは問題が解決したからではなく「進学そのものを諦めた」可能性が高いのです。

どういう点が問題なのか?

家族を助けることは素晴らしいことです。
しかし、その負担が重く「子どもとしての当たり前の権利」が得られていない環境下にある場合は手伝いの範疇を超えてヤングケアラーであると言えるかと思います。

具体的には以下のような以下のような状況になっている場合がそれに該当します。

 ・睡眠時間が取れず、宿題ができない。または遅刻が増える。
 ・家族の世話や介護を理由に早退または休まなければならない。
 ・友達と遊ぶことができない。遊ぶ時間がない。

言葉としての「ヤングケアラー」は知られている現状ですがそれが将来へどのような影響を及ぼしているのか、であったり勉学にどのような影響をもたらしているのか想像に難くないものではありますがほぼ知られていません。

勉学への影響

勉強する時間がとれないことや睡眠不足が授業への遅れにつながり、挽回する機会もないまま進学の選択肢を狭めるきっかけになっています。ヤングケアラー環境にある中学生の約20%が「宿題や勉強をする時間が取れない」と回答し、さらに平日1日あたりの世話に費やす時間が長いほど、勉強時間が短くなる傾向がはっきりと出ています。

また、家族の世話をしている子供ほど、自分の成績を「低い」または「非常に低い」と自己評価する割合が高くなっています。これは本人の能力の問題ではなく、物理的に時間が奪われていることによる学力低下を示唆している結果と言えることでしょう。

進学への影響

「本人の希望」と「家の事情」を天秤にかけた時に希望を諦める、あるいは妥協している、といった実態も見えてきます。現在大学生になっている「元ヤングケアラー(または現在進行系)」に尋ねた結果としては家族の世話をしていた大学生の34.3%(約3人に1人)が、受験勉強や進学先の選択において「何らかの影響・制約があった」と答えています。

その内容としては

・  「第一志望の大学・学校をあきらめた」:9.6%
・  「受験勉強の時間が取れず、ランクを下げた」:12.8%
・  「実家から通える範囲の学校にした(遠方を諦めた)」:16.6%
・  「学費等の経済的な不安があった」:17.5%

といったものが含まれています。

また、就職か進学かの選択においては全日制高校2年生への調査で卒業後の進路として

「大学進学」を希望する割合が、世話をしていない生徒(72.4%)に比べ、ヤングケアラー(63.8%)は約10ポイント低いという結果が出ています。

一方、「就職」を希望する割合は、世話をしていない生徒(6.3%)に比べ、ヤングケアラー(10.6%)と、約1.7倍も高くなっています。

希望であればいいのですが前述の通り、制約を感じる中での選択・判断ですので家族想いの子どもという美談で済ませられる話ではなく、境遇として致し方のないこととするべきでもないと考えます。

ケアから離れ、ただの「子ども」に戻れる時間を。
子ども食堂がヤングケアラーにできる2つのこと

ヤングケアラーの問題は家庭内で完結しており、外からは見えにくいのが特徴です。
だからこそ、家でも学校でもない子ども食堂には、彼らの未来を守るためにできることがあると考えております。

一時的な休息の場として使ってほしい

ヤングケアラーの子どもたちにとって、家は「安らぎの場」ではなく、家事や介護という「仕事場」になってしまっています。子ども食堂に来ている時間だけは、ケアの責任から物理的に離れることができます。

・幼い兄弟を一緒に連れてきてもいい。
・親と一緒に来てもらってもいい。

そんな風に考えて子ども食堂に一緒に行けるような環境が整えばと思っております。

学習時間の確保

「家にいると、どうしても家族の用事をしてしまう」という子どもにとって、学習支援の場は「みんなと学び直せる場」になりうると考えます。

たとえ短い時間であっても大人と一緒に、友達と一緒に学ぶことで自信の源になればと思っております。

支援には様々な形があります。
行政支援も今後増えていくでしょう。

必要なのは「一緒に食事をし、一緒に勉強し、一緒に遊び、一緒に笑う。」そんな環境だと思っております。

介護や家事に追われ、自分の将来を諦めてしまう子どもを一人でも減らしたい。
「勉強したい」という意欲が、家庭環境によって押しつぶされないように。

Next Educationは、温かい食事と学習支援を通じて、ヤングケアラーの子どもたちが「自分の人生」を歩み出せるよう、これからも寄り添い続けます。

佐賀県内の子ども食堂を運営されている皆さまにおかれましては、是非こちらもご覧ください。
皆さまと一緒に佐賀県の子供たちの未来を、支えていけることを願っております。

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