コラム

子どもの貧困を教育の格差にしない

2026年2月7日

昨今では【子どもの貧困率11.5%】というフレーズがよく使われます。これに合わせて「子どもの7人にひとりが貧困である」というようにセンセーショナルな言葉が使われることを目にします。

「ひとつのクラスに4~5人貧困の子どもがいる」ということになるのですが実際、近所の小学校の投稿風景なんか見ててもそういう風に見えないですし、実感のわかない数字ですよね。

もしかしたら正しい解釈の仕方があるのかもしれませんのでまずは「子どもの貧困とは何を指しているのか」というところを確認していきましょう。

子どもの貧困とは?

子どもの貧困を正しく理解する上でまずは日本において「飢え」などを示すものではなく、次のような指標で発表されているものになります。

1.「相対的貧困」

これが子どもの貧困に使われる主な指標となっており、国民生活基礎調査などで出てくる「貧困」はほとんどが相対的貧困を指しています。これは「国民の所得の中央値の半分に満たない所得で生活する世帯」が該当し、その世帯で生活する子どもが「子どもの貧困」に当てはまるケースになります。

2021年の国民生活基礎調査によると貧困線は127万円
これに世帯人数の平方根を乗じた金額以下で暮らす世帯が貧困に該当します。

例えば
・親ひとり、子どもひとりの二人世帯の場合
 127万円×√2=約179万円(月14万9千円)以下の世帯収入
・親ひとり、子どもふたりの三人世帯の場合
 127万円×√3=約220万円(月18万3千円)以下の世帯収入
・親ひとり、子ども三人の四人世帯の場合
 127万円×√3=約254万円(月21万1千円)以下の世帯収入

いう計算方法となります。
つまり、ひとり子育てをする一人親家庭ですと9時~15時までの間の6時間を勤務し、時給1,128円で22日間勤務してようやく貧困線をクリアできるようなラインです。

少し想像しただけでもほとんどのひとり親家庭が相対的貧困に該当するのではないか?と想像がつくかと思います。
実態としてひとり親家庭の相対的貧困率は44.5%、約半数が貧困状態にあると報告されております。

2.「物質的剥奪」

これは内閣府の調査などで補助的に用いられる指標で「生活必需品や経験が欠けているか」という実態に着目した定義です。以下の項目のうち「経済的な理由で持っていない、あるいはできない」項目がいくつかある場合に貧困に該当するとされています。

・年齢に見合った服や靴(2足以上)、学習机、辞書、静かに勉強できる場所があるか、など。
・年に1回の家族旅行、学校外のスポーツや習い事、友達を家に呼んで遊ぶ、など。

この指標によると
・年齢に見合った服・靴(2足)が買えない: 約3~5%
・学校外の教育活動(塾・習い事)ができない: 30%以上
・静かに勉強できる場所がない: 約10~15%
・家に本(マンガ・雑誌除く)がない: 約10%
・年に1回、家族旅行に行けない: 30~40%程度
・誕生日のお祝いができない: 約5%

参考資料:子供の貧困の実情と求められる支援:令和2年度 子供の生活状況調査からのメッセージ
以上の2点から「子どもの貧困」が定義されています。

身なりでは貧困はわからない

子どもの貧困の定義を知ると「明日食べるご飯に困っている家庭」だけが貧困なのではなく、「世帯の所得が低い」=「勉強机が無い」「部活動の用具が買えない」「塾や習い事に通えない」いわゆる教育機会に恵まれていない事象にも貧困が該当することがわかります。

中には貧困世帯であってもスマートフォンを持っていたり、流行の衣服を着ていることもあります。

家庭毎の価値観によるものもあり、子どもにすべてを与えられなくとも貧困世帯に見えないような身なりを整えることを無理に優先する家庭もあるため「見えない貧困」であるケースも珍しくありません。

子どもの貧困は教育の格差を生んでいるのか?

こちらの記事で記載した通り、子どもの貧困と学力は強い相関があるとされています。
さらに子ども家庭庁の「子供の貧困対策大綱における指標【参考資料2-3】」によると

・生活保護世帯に属する子供の大学等進学率は42.4%
・児童養護施設の子供の高校卒業後進学率は36.4%
・ひとり親家庭の子供の高校卒業後進学率65.3%

となっています。

対して全世帯平均では大学進学率76.2%、浪人を含むと84%と言われています。
世帯により進学率の違いが如実に出ることが明らかな違いとしてもうひとつ、文部科学省の「高校生等への修学支援に関する参考資料(8)」を見てみましょう。

その結果によると大学進学率は

世帯年収大学進学率
250万円未満20%
~462万円40.1%
487万円~650万円48.6%
662万円~812万円58.5%
825万円~1037万円65.7%
1062万円~71.0%
文部科学省:第18回21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)の結果

という結果になっています。
「住民税非課税世帯ですと20%」「所得1000万円以上の世帯ですと70%以上」という差が生まれています。

これは学力と、そもそもの選択肢として「諦めている」という状況も含まれた違いが教育の格差として反映された結果となっていることと思います。

「だらしない子」「やる気のない子」に見えていませんか?

大人がイメージする「子どもの貧困」は実態とかけ離れていることが多いです。かつてのような「着ている服がボロボロ」といったわかりやすいものではありません。

「一見すると普通の子に見えるが、生活の細部や精神面で決定的な『剥奪(欠如)』がある」そんな特徴があります。例えば次のような特徴があります。

・「体験」の話題に入ってこない子ども
 └ 「夏休みにどこ行った?」「習い事なにやってる?」という会話になると黙り込んだり、場を離れたりします。家族旅行や有料のレジャー経験が極端に少ないためです。

・部活や行事に消極的
 └ ユニフォーム代や遠征費といった出費を親に頼むのを遠慮し、部活に入らなかったり、行事を休みがちになったりします。

・自己肯定感が低い子ども
 └ 小さな成功体験の積み重ねが不足していることから「どうせ自分なんて」「頑張っても無駄」と考える特徴があります。

・肥満または極端な痩せ型
 └ 安価で手軽なジャンクフード中心の食生活により栄養バランスが崩れた体型をしていることがあります。

子どもの貧困と教育の格差の結びつきを絶つ

学力に違いには幼少期の経験や栄養にまで遡っての影響があるという残酷なデータがあります。しかし、私たちは信じています。適切な「環境」と「ツール」、そして信頼できる「大人」がいれば、その相関関係は覆せるはずだと。

私たちは単なる「食事の場」を超え「学びの場」としての活動に力を入れています。

家に机がなくても、ここでなら勉強ができる。 参考書が買えなくても、ここには豊富な教材がある。 そして、デジタルの格差を生まないよう、一人ひとりにタブレットパソコンを手渡す。

私たちが提供したいのは、単なる物資ではありません。 「自分も頑張ればできるんだ」という自己肯定感と、「未来は自分で変えられる」という希望です。生まれた家にお金があるかどうかが、その子どもの人生の最終学歴を決める要因であってはなりません。

お腹がいっぱいになり、安心して勉強に打ち込める。

そんな当たり前の「放課後」を、ここ佐賀から、すべての子どもたちへお届けしたいと思っております。

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